夢はたくさん見たほうが良かった!
睡眠の5つのミッション以外にも、眠りを語るえ上で欠かせないのが「夢」
の話です。なぜ、私たちは「夢」を見るんでしょうか?
そもそも、「夢」とはどんな現象、どんな役割があるのでしょうか?
不思議あまねく夢の世界へ、少し、寄り道してみましょう。
「夢を見るのはレム睡眠の時」といわれていますが、たしかに、レム睡眠の時に
夢を見ます。しかし、ノンレム睡眠の時にも、かなり夢を見ることが、
最近の実験でわかりました。
夜、私たちは、ずーーと、夢の世界にいるのです。
なにか、ロマンチックですね。井上陽水の「夢の中へ」って曲がありましたね。
1950年代のレム睡眠の発見直後、レム睡眠中に、夢を見るということが
明らかになりましたが、1957年、「ノンレム睡眠中でも人は夢を見る」
こともデメント教授が発見し、その後、多くの研究者によって確認されました。
起きたときに覚えている夢は、通常、目が覚める直前に見た夢といわれています。
普通、浅いレム睡眠をくりかえして、目覚めるので、「レム睡眠=夢」とされて
きました。
深いノンレム睡眠中に起こしても、その時にも夢を見ていたことが、わかりました。
夢の内容を聞きますと、レム睡眠はストーリーがあって実体験に近い夢、
ノンレム睡眠中の夢は、抽象的で辻褄があわない夢が多いことがわかってきました。
わたくしも、何かに追いかけられている怖い夢をみたり、
これ、覚えておいて小説にでもなるなあといった、いい夢も見ました。
「体は寝ていて脳が起きている」レム睡眠中は、覚醒時のように大脳皮質が活性化し、
見ている夢に関連して、大脳の運動野の手足を司る神経細胞が活性化しています。
脳の中では「体を使って、さも現実のように夢の世界を体験している」ので
夢が、具体的で、合理的であるらしいです。
動物も夢を見るというのは、犬や猫を飼っている人には、わかるようです。
わたしは、動物は、にがてですので、経験はありません。
何十日も睡眠中の脳波を記録した時に、犬が楽しそうに尻尾を振ることが
よくあるそうですね。その時、犬は「レム睡眠の真っ最中」なのだそうです。
ノンレム睡眠中は「脳も寝ている」ので、夢を見ても大脳の運動野は
活性化しません。
深い睡眠中に急に起こされると、いわゆる「寝ぼけた状態」になって、しばらく
思考が混乱して、場所や時間の整合性が付かないようなときがありますが、
「ノンレム睡眠中」に見る夢もまさにこのような状態なので、
夢に整合性がなかったりします。
以上の結果「から、起きた直後、「抽象的でよくわからない夢」を記憶している場合、
ノンレム睡眠中に、目覚めたと考えられます。
これは、「人はレム睡眠中のとき、自然に目が覚める」パターンから外れているので
眠りが乱れているとも考えられます。
また「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が入れ替わるごとに、夢も切り替わって
いることも分かっています。これらを踏まえると、夢は見た回数が多いほど、
レム睡眠とノンレム睡眠のスリープサイクルをしっかり回せているということが
言えます。
つまり、正常なリズム通りの睡眠が取れれば、人は7,8回ほど、別々の夢の世界を
旅していることになります。(何とも残念なことに、しっかり眠れば眠るほど
最後の夢以外はわすれてしまっているのです。)
「見たい夢」は見られるのか?
ちなみに、なぜ「明け方の夢」はおぼえているのでしょうか?
明け方に見る夢それ自体に、何か意味があるのでしょうか?
おそらく「覚醒直前のレム睡眠時に見る夢」には、「起きる準備」という役割が
あることが考えられます。
これは「なぜ夢をみるのか?」ということにもつながると思いますが、
寝ぼけを回避するために、定期的にレム睡眠で大脳を活性化させて
交感神経をゆういにして、「目覚め」とそこから続く「覚醒活動」の
準備を担っているためと思われます。
こう考えますと、明け方に近づくほどに「合理的な夢を見る」レム睡眠
が長くなるのも理にかなっています。
では、「見たい夢」は見られるのでしょうか?
「夢を見る」とされたレム睡眠に関する重大な発見(レムにかかわる
神経機構やメカニズム、どこにその神経があるのかなど)は、レム睡眠自体の
発見から10年以内に見つかったものが多いとされています。
しかし、まだ解明されていないことが多いのも事実なのです。
「好きな夢をみられるか?」についても、レム睡眠発見直後に盛んに
検証されました。
具体的には次のような調査が行われました。
・「見たい」と思った夢を事前に上げ、実際にその夢を見た確率を
測ってみます。
・寝ている人の耳に息を吹きかけたり、冷水を顔に垂らしたりして、
「音や、温熱、皮膚感覚」の刺激をおこない、夢の内容が変化するか、
もしくは、刺激が夢の内容に取り込まれないかを調べてみます。
で、結論はといいますと・・・・「見たい夢を見るのは不可能」事前の宣言と
夢の内容が一致したり、夢が刺激によって変化したりすることは、
偶然に起こる以上の頻度で生じることはありませんでした。
なかには、大学の教室で、100人もの学生が少し離れた場所で眠っている
特定の一人の学生に、夢の内容をいっせいに話しかけてその内容の夢を
見させることができるのかなどの実験も、真剣に行われました。
今では「一笑」に付されるかもしれませんが、当時は学生も教官も
必死でした。
「夢を見る睡眠」の発見が、それほどまでにしょうげきだったのです。