「不眠」の謎が解けた!――今夜も眠れない人へ、睡眠薬を欠かせなかったライターの治療ルポ
source : 週刊文春 2019年12月5日号
なぜ人は眠るのか。その理由は今の科学ではわかっていないという。だが、睡眠不足は集中力などの低下を招き、ゆくゆくは健康を損なうことに。30年以上も不眠で悩み、病院通い、睡眠薬を欠かせなかったジャーナリストの“不眠治療ルポ”。
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不眠とは腐れ縁である。
不眠体質であることを自覚したのは高校生のころ。家族が寝静まる深夜になっても一人眠れずに過ごす夜が少なくなかったからだ。以来30年以上にわたって、不眠とどうにか折り合いをつけて生きてきた。
睡眠薬を飲み始めたのは2010年、45歳の時だった。ユニクロの取材で中国へ出張した初日のこと。取材がうまくいくのかどうかが心配で、一睡もできず朝を迎えた。これはまずい、と思い、帰国後、近所の内科医で睡眠薬を処方してもらった。それ以降、睡眠薬が手放せなかった。
午前3時、4時に目が覚めて、一睡もできず朝を迎える
不眠がさらに深刻になったのは、2014年。宅配便業界の取材で、荷物を仕分けする現場で夜勤のバイトとして数カ月働いた後のこと。当時のことをこう書き残している。
〈不眠が、これまでとは違い、抜き差しならないほど深刻になっていたのだ。(2014年)11月と12月の2カ月は、何をしていたのか、という記憶がほとんどない。スケジュール帳を見れば、年末であるため何件かの飲み会が入っていたのがわかるが、その席でどんな話をしたかとなると、途端に記憶が曖昧になる。
ただ、このころ、午前3時、4時に目が覚めて、そのまま一睡もできず朝を迎えることが多くなった。そうした日、午前中は眠気のため、身体と頭がほとんど機能しなかった〉(『仁義なき宅配』小学館文庫)
こうした異常な疲れの原因は、肝臓や腎臓などの不調にあるのではないかと自分で勝手に見立てて、何度か病院で血液検査を受けたが問題はなし。ただ、胃腸科に行くと、胃カメラの結果、逆流性食道炎と診断され、薬を処方された。
胃腸以外の内臓に問題がないのならと心の病気を疑い、精神科の門をたたいた。そして14年の年末、うつ病の薬を処方してもらった。
ジェイゾロフトという抗うつ剤を飲むと、目がさえ、鼓動が早まり、聴覚過敏になった。抗うつ剤は全く合わず、1週間もたたず服用をやめた。うつ病ではないと見切りをつけた。
不眠が続くと、朝起きた時から、「今晩はちゃんと寝られるだろうか」と不安になる。夜になれば「また今夜も眠られないんじゃないか」と嫌になる。意味もなく本を読むなどして夜更かしをする。目を瞑っても眠れなくなることが怖いのである。不眠自体もつらいが、この気持ちを共感してもらえない事実が孤独感を深める。「しんどいのはオレだけかい!」という気持ちだ。次のページ睡眠について専門家は「10%もわかっていませんね」12345