真夜中、脳と体では何が起きているのか?
ぐっすり眠った翌朝、あなたの脳と体は、どんなコンデションだろう?
頭がさえているから、良いアイデアが浮かびやすい。
集中力が途切れないので、思考の精度が上がる。
コンデションが整い体調の良いので、粘り強く仕事の取り組める。
では、「ぐっすり眠る」とは何なんでしょう。?
その答えは、やはり真夜中に、特に眠り始めの90分にあるのです。
真夜中に、睡眠がきっちりととれていれば、翌日のパフォーマンスは
確実に上がっています。
そして、確実に脳と体、そして、健康な心につながっていきます。
眠っている間に、脳と体に何が起こっているのかを知れば、
「ぐっすり眠る=質の良い睡眠」とはどういうものかがわかってきます。
睡眠が遂行するミッションは、主に次の5つです。
睡眠ミッション① 脳と体に「休息」を与えてくれる。
睡眠の役割で欠かせないのは、「休息」です。「睡眠=休息}ではないですが
大きな役割であることは確かです。
「100%電源オフ」とまではいきませんが、睡眠中の脳と体はまさしく
「スリープモード」になっています。
人間の体では、意思とは関係なく、自律神経が常に働いています。
体温を維持し、心臓を動かし、呼吸し、消化し、ホルモンや代謝を促進するのが
自律神経です。
良く知られているように、自律神経には、活動モードの「交感神経」と
リラックスモードの「副交感神経」この2つは、24時間働いてくれていますが、
代わる代わる、どちらかが30%優位に働いています。
日中は交換神経が優位なのはとうぜんですね。
体内では、血糖値、血圧、脈拍が上がり、筋肉と心臓の働きが活発になります。
その時、脳は集中力と緊張感が増しています。
緊張時や、集中しているときは、神経細胞が活発化しますので、
現れるのは早い波形の脳波です。逆にリラックスしているときは、
ゆっくりで乱れの落ち着いた脳波が現れ、ストレスを取り除く「α波」などが現れます。
ノンレム睡眠中と食後は、副交感神経が優位になります。
心臓の動きや呼吸が緩やかになります。
そして、消化と排泄が促されます。どちらも大切なのですが、
ビジネスパーソンの悩みは、交感神経優位の状態が多すぎる点なんです。
常に活動モードが続けば、体と脳は疲労し、ストレスがたまることになります。
夜になったらスムーズに副交感神経優位の状態に交換にないと、
寝つきが悪くなり、眠りが浅くなります。
やがて、自律神経のバランスが崩れると、体温や腸管の働きなど、
根本的な体の機能もすべておかしくなることになります。
眠り始めの最も深いノンレム睡眠が出現する黄金の90分で、
しっかりと副交感神経優位に転換し、脳と体を休めることが、
最高の睡眠の第1ミッションなのです。
睡眠ミッション②「記憶」を整理して、定着させる。
記憶に関しては様々なグループが独自のデータをもとに、意見を述べているので、
知識が完全に統合されているわけではありません。
しかし、学習後に、睡眠をとることで、記憶の定着が進むと言われています。
睡眠と記憶については、複数の学者の報告から、次のような概念が
提唱されています。
・レム睡眠中、エピソード記憶(いつどこで何をしたか)が固定されます・
・黄金の90分で訪れる深いノンレム睡眠は、イヤな記憶を消去します。
・入眠初期や明け方の浅いノンレム睡眠では、体で覚える記憶(意識せずに覚え
られる記憶)が固定されます。
つまり、ノンレム睡眠、レム睡眠を数セット繰り返し、時間がたつとともに
浅い睡眠に移行する中で、記憶が整理され、定着していきます。
記憶というインプットばかりに意識が行きますが、イヤなことや不要なことは
忘れることも大切です。
また、最近では、入眠直後のノットも深いノンレム睡眠の時に、海場から
大脳皮質に情報が移動し、記憶が保存されるという報告もあります。
このことからも、記憶にとって睡眠が欠かせないことがわかります。
新生児はレム睡眠が9割ほどですが、脳の発達段階でレム睡眠が全焼し、
13歳くらいで大人と同じようにノンレム睡眠が増えます。
このようなことから「レム睡眠は脳の発達に関係する」という仮説も生まれ
研究されていますが、未知の部分も多いのです。
この部分は専門家たちの「生涯の研究テーマ」のひとつなので、
これから突き止められることを期待しましょう。
「睡眠学習は効果がある」という説は、睡眠時の脳が記憶を処理していることか
ら出てきたのでしょうか。これがいまのところ、なのエビデンスもない
ジャンク情報なのです。
睡眠ミッション③ 「ホルモンバランス」を調整する。
脳はホルモンの働きも制御していて、睡眠時には多くのホルモンが
働いています。ホルモンは生活習慣病とも密接なかかわりがあるので、
「良き友」としてつきあっていきたいものです。
良い眠りは、生活習慣病の改善にもつながることが研究で分かっています。
例えば、睡眠を制限すると、脂肪細胞から分泌される「食欲を抑制する
レプチン」が減少し、胃から分泌される「食欲を増すグレリン」が増えることは
先ほど、書きましたね。そのほか、細胞を生まれ変わらせ、身体機能を
を活発化させる「アミノ酸」などにも、変化が生じます。
このように、睡眠とホルモンバランスは密接な関係にあります。
とりわけグロースホルモン(成長ホルモン)は、黄金の90分に最も多く出ます。
大人の場合、このホルモンのおかげで筋肉や骨は強くなり、代謝は正常化
されます。グロースホルモンと構造が近い、生理や母性行動に関与する
プロラクチンも最初のノンレム睡眠で多く分泌されます。
皮膚の保水量は睡眠で上がるのですが、これは肌の水分が
睡眠と密接につながっている「性ホルモン」や「グロースホルモン」の
影響を受けるからです。
睡眠ミッション④「免疫力」を上げて病気を遠ざける
免疫はホルモンと連動しており、睡眠との関係も深い。
睡眠が不適切になりますと、ホルモンバランスが崩れ、免疫の働きのおかしく
なります。風邪やインフルエンザ、がんなどの免疫に関係する病気になる
確率が高くなります。
睡眠には休息という役割も大きいので、「風邪は寝て治す」というのは、免疫力
と休息の面で理にかなっているのです。
実際、インフルエンザの予防接種でワクチンを取り入れても、睡眠が乱れて
いると、免疫が確立せずに、ワクチン接種の効果が認められないという報告もあるほどです。
また、リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギーは、天候などさまざまなものだ
トリガーとなりますが、免疫機構とも大きくかかわっています。
つまり、睡眠時の免疫増強がきちんと働いていないと、アレルギーが悪化する
棄権もあります。
睡眠ミッション⑤「脳の老廃物」をとる。
脳は直接、頭蓋骨に収まっているわけではありません。
「脳せき髄液」という保護液につかっているので、転んで頭を打っても、脳が
骨に直接ぶつかって傷つかずにすむようになっています。
小さな「
脳のプール」ともいえる脳脊髄液はおおよそ150㏄。1日4回。600㏄jほど、
入れ替わっています。
新しい脳脊髄液が出て、古いものが排出されるとき、脳の老廃物も一緒に
除去されるというエビデンスがあります。
脳の老廃物自体は、神経細胞が活発な覚醒時にたまります。
日中の覚醒時にも「たまった老廃物除去」は行われていますが、
それだけでは、追いつきません。なので就寝時にまとまったメインテナンスが
のうからしても、必要なのです。
脳の老廃物がきちんと排出されないと、アルツハイマーなどの疾患の
引き金となる可能性があります。
ラボで実験をしたところ、アルツハイマーになりやすい遺伝子をもったマウス
の睡眠を制限すると、アルツハイマーの原因物質のひとつ「アミロイドβ」が
溜まりやすくなることがわかりました。
これは、眠っていれば、正常に分解・排出され、蓄積しないはずの脳の老廃物
なんです。
これらのマウスに睡眠剤を与えて無理にでも眠らせると、アミロイドβの沈着率
の下がりました。
私たちはこの研究を「Science」に発表しましたが、人間でも「睡眠障害と
アルツハイマーのリスク」に関して類似したデータが出てきています。
もちろん、これは「睡眠制限はもともとアルツハイマーになりやすい人の認知症
率を促進する」という話で、睡眠負債は認知症の直接原因ではなく、
あくまでも危険因子なのです。
だが、脳の老廃物の排泄がうまくいかないと、アルツハイマーに限らず
長期的に脳のダメージにつながることは確かなことなのです。
「眠る前の目薬」で目は良くなる?
睡眠の役割は、以上の5つですが、最初に挙げた休息の役割はやはり大きい
です。
疲労を回復してこそ、パフォーマンスはあがるのです。
和たちは放っておくと、自分の脳も体も使いすぎてしまうのです。
人が明かりとであってから「夜は暗くて何もできない時間」という生物としての
大前提が崩れ、20世紀の終わりには当然のように「24時間オンタイム」が
可能になってしまったのです。
だからこそ、意識的に休むことが必要ですし、睡眠という休み時間を
「フル活用」する工夫があってもいいということになりました。
たとえば私はコンピュータの影響で、よく目の疲れを感じます。
もともと、視力が低いこともあり、グラフィックな作業をしたあとなどは、
ドライアイの見本のような状態です。
同じ悩みを抱えるビジネスパーソンも、少なからず、おられるでしょう。
そこでしばしば疲れ目用の点眼薬を使いますが、夜寝る前にさすと、
そのあと、瞼を閉じたままになり、目を使わない休息期に回復させる
ことになりますので、より効果があると感じます。
眼科は専門外で。こうした目薬の類は対症療法でして、
1時はよくなりますが、抜本的な治療とはなりません。
しかし、対症療法だからこそ、休息とセットにすることでより効果を極めるとい
という工夫をしてもいいでしょう。
「風邪薬を飲んだらぐっすり寝なさい」という母親のの言葉は、
やはり正しいのです。