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体温スイッチ① 就寝90分前の入浴

入眠時に意図的に皮膚温度を上げて、深部体温を下げます。この「上げて

、下げる」というのが良質な眠りには欠かせません。

さらに、深部体温のある作用を利用すれば、皮膚温度と深部体温の差を

より縮めることができます。

そんな深部体温と皮膚体温をより縮める方法として紹介したいのが、「入浴」

です。皮膚温度は変化しやすいです。冷たい水に手をつければ冷たくなるし、

お湯につかったり、ストーブに近づいたりするとすぐに上がります。

だからといって41℃のお風呂に入ると、皮膚温度と深部体温が41℃になるという

わけではありません。

そんなことになると病気になってしまいます。

先ほど述べた通り、人間の体は自律神経の働きでホメオスタシス(恒常性)が

保たれているから、入浴による皮膚温度変化はせいぜい 0.8~1.2℃程度なんです。

体は、筋肉や脂肪といった遮熱作用のある組織でおおわれており、なおかつ

深部温度はホメオスタシスの影響下にありますので、そう簡単に変動しません。

しかし、入浴はその深部温度をも動かす強力なスイッチといえるのです。

入眠まえの軽い運動も体温上昇効果があります。

しかし、過度な運動をすると交感神経が刺激されますので入眠には不向きなのです。

疲労や痛みを伴うことも考えられますので、「眠りのため」にはお勧めできません。

入浴に関する実験データでは、40℃のお風呂に15分入った後で測定すると、

深部体温もおよそ、0.5℃上がっていました。

普段の深部体温が37℃なら、入浴後は37.5℃になります。

この「深部体温が一時的に上がる」というのが非常に重要で、深部体温は

上がった分だけ大きく下がろうとする性質があります。

なので、入浴で深部体温を意図的に上げれば

入眠時に必要な「深部体温の下降」がよりおおきくなり、熟眠につながります。

0.5℃上がった深部体温がもとに戻るまでの所要時間は90分。

入浴前よりさらに下がっていくのはそれからなのです。

つまり、寝る90分前に入浴を済ませておけば、そのあとさらに深部体温が下がって

いき、皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できるということなのです。

すぐ寝るときは「シャワー」がベストです。

午前0時に寝たいのなら、こんなタイムスケジュールになります。

・22時00分  入浴。湯船に15分つかる。皮膚温度、深部温度共にアップ。

・22時30分  入浴終了。皮膚温度は0.8~1.2℃、深部温度は0.5℃上がって

 いる。汗をかくなどして熱放散スタートします。

・0時00分   熱放散により深部体温は元に戻り、さらに下がり始める。

    このタイミングでベッドに入った状態でいること。

・0時10分   入眠。皮膚温度と深部体温の差は2.0以内に縮まっている。

実際はこれほど厳密ではないですが、目安としてはこんな具合です。

体温が上がったら自然に下がるものですが、熱放散には扇風機なども

効果的です。夏の暑い時は、「お風呂上りに扇風機に当たる」という人も多い。

これはより熱放散を活発にし、上がりすぎた体温を本能が下げようとしています。

逆にいえば、入浴後は熱放散のために夏も冬も発汗しています。

「寒い時期だから」とすぐに着替えて分厚いガウンなど着込んでしまうと、

熱放散がうまくいかず、深部体温がが下がらなくなります。

40℃未満のぬるいお風呂に15分より短い時期に入った場合は、

深部体温は0.5℃も上がらないし、元に戻るまで90分もかかりません。

ゆえに「忙しくて、寝る90分前に入浴を済ませるのは無理だ!」という人は

深部体温が上がりすぎないように、ぬるい入浴かシャワーですませましょう。

〇〇風呂ならさらに効果アップ!?

今、紹介しました入浴と体温のデータは、スタンフォードと秋田大学が協力

しておこなった実験によるものです。

40℃のお風呂に15分入ると深部体温が0.5℃上がるというのは普通のお湯による

データですが、秋田には良質の温泉がたくさんあります。

そこで、SCNラボOB/OGの秋田大学の神林崇氏、上村佐知子らとの共同研究

で、温泉と普通のお風呂の比較をすることにしました。

炭酸泉、ナトリウム泉、普通のお風呂それぞれの体温の変化調べてみました。

通常、炭酸泉は温度は低いですが、比較のために40℃としました。

すると、炭酸泉やナトリウム泉といった温泉浴ほうが普通浴よりも深部体温

が大きく上がりました。熱放散後の深部体温も、温泉浴のほうが普通浴より

大きく下がることもわかりました。

さらには睡眠第1周期のノンレム睡眠の振幅も大きくなった。最強の

「90分の黄金のノンレム睡眠」が現れるのです。

この結果から、睡眠のスイッチとしては深部体温を大きく上げて下げられる

「温泉」のほうが強力といえます。

ただし、ナトリウム泉は入浴後の疲労感が強い。いわゆる「湯疲れ」や

「のぼせ」が起こってしまうのです。

「湯疲れ」には複数の原因がありますが、「発汗による水分ミネラルの流出」

「入浴前後の血液量変化」などで生じます。

その点、炭酸泉は、普通浴と同じように湯疲れがありません。

温泉のメリットが大きいうえにデメリットが少ないのではあれば、

湯治などで長期滞在する人、ケガの後のスポーツ選手、疲れを癒しに

温泉に行く人は、炭酸泉を選択するといいと思います。

理論的には市販の炭酸入浴剤でも、同じ効果があるはずですが、

炭酸濃度や成分が天然炭酸温泉と同じかどうかは、微妙なところです。

良いものもあるし、悪いものもあります。

余談になりますが、入浴剤に限らず、科学的だと謳う商品に対する

選択眼を鍛えましょう。

たとえ話でありますが、「マウスにこの成分を体重の10分の1(約3グラム)

与えますと、60%のマウスは痩せました」という実験データをもとに、

その成分がわずか1グラム(ヒトの場合、体重の10分の1なら数々の必要)

も入っていない商品が、「科学的エビデンスに基づくダイエットサプリ!」

として、販売されていることもあるのですから。

体温スイッチ② 足湯に秘められた脅威の「熱放散力」

「時間がないならお風呂よりシャワー」と書いたが、シャワーよりも効果的な

な即効スイッチがある。それは「足湯」

風呂上がりに暑くてたまらない時は、体幹も汗を書き、熱放散しています。

北欧ではサウナに入ったあと、雪が積もった戸外に裸で飛び出していくが、

深部体温が大きく上昇していて、熱放散しているとき「でも基礎値より体温

が高いから平気なんでしょう。

しかし、熱放散の主役は体幹ではないのです。

熱放散を主導しているのは、表面積が大きくて毛細血管が発達している手足

です。なので、「足湯」出足の血行を良くして熱放散を促せば、入浴と同等の

効果があります。

入浴は物理的に時間はかかりますが、足湯ならさほどでもないです。

入浴はおもに「深部体温を上げるアプローチ」。体温が大きく上がって

大きく下がる分、時間がかかる。

その点、足湯はおもに「熱放散のアプローチ」。体温の上昇は大きくないですが、

その分深部体温を下げることに貢献してくれます。

寝る直前でもOKという点からも、足湯は多忙なビジネスパーソン向けです。

足湯の目的は「足の血行を良くして、熱放散を活発にすること」なので、

マッサージでも同等の効果は期待できます。ただし、自分で足を

マッサージしますと体に力が入ってリラックスできなかったり、やり方を

工夫して脳が疲れたりと、睡眠には向きません。

家族が寝る前に足のマッサージをしてくれるというケースも、

ゼロではないですが、レアだと思います。

やはり、風呂桶ひとつでできる足湯が現実的なチョイスといえそうです。

シャワーで重点的に温めるなどやり方はいろいろあると」おもいますので

是非工夫して寝る前に足も温めてほしい。

靴下をはくと眠気が逃げる?

「足が冷たくて眠れない」という人は多い。とくに女性の方に多いですね。

「寝る時も靴下をはいています。」という話をよく聞きます。

冷え性の原因はいろいろで、「血管が細い」という遺伝の影響もあります。

たばこも血管を細くするので、ヘビースモーカーはたいてい冷え性です。

「靴下をはいて足を温める⇒靴下を脱いで熱放散し、深部体温を下げる⇒入眠」

このようなプロセスが理想です。

しかし、冷え性で悩んでいて、「靴下をはいても足は冷たいまま」という人は

多いです。なかなか寝付けず、結局は履いたまま入眠したり、「重ね履き」

したりいいいいすると聞きますが、靴下を履いたまま寝てしまうと、

脚からの熱放散が妨げられてしまう。

足から熱が逃げない状況は「深部体温がさがりにくい」ことを意味し

「眠りの質の悪化」にダイレクトにつながります。

1時的な着用にとどめるか、よほどの冷え性でもない限りは避けたいほうが

眠りのためでしょう。

脱がない靴下は、眠りの助けにならない。

運動やマッサージなどで、日ごろから手足の血流をよくすることが必要です。

電気毛布や湯たんぽを使う方法もありますが、ずっと温めていたら今度は

熱がたまる「うつ病」現象が発生し、熱放散が起きなくなります。

もし使うのであれば、寝る前だけにしましょう。

あったまって血行が良くなったところで外して眠れば、熱放散が促進されます。

ほかにも「寒くてたまらないなら太い血管を温めよう」とネックウオーマーで

首をあたためたり、足の付け根を使い捨てカイロなどで温かくしたりする人

もいます。たしかに、首や鼠蹊部には太い動脈が通っており、

発熱時や熱中症のときに素早く体温を下げるには、あくまでも、

表面積が大きく毛細血管が発達している手足です。

結局のところ冷え性の人に1番いいのは、抜本的な体質改善です。

運動不足を解消して血流量を増やす、たばこをやめるといった

生活習慣病の改善なんです。

それは長期的な取り組みとなるから、まずは、入浴や血流量を増やしましょう。

体温スイッチ③ 体温効果を上げる「室温コンデショニング」

眠りというと寝具の話になります。どんなものがいいかという

相談をよく受けます。

掛布団より敷布団のほうが材質による違いは大きいです。

SCNラボOBの千葉伸太郎氏と調査したところ、

沈み込むマットレスと、高反発のマットレスでは熱放散が大きく違ってくるので

入眠前半の深部体温が0.3℃もちがいます。

(高反発のほうが低い)というデータがあります。

しかし、どんなにいい寝具でも、室温を整えておかないとメリットを

引き出すことはできません

日本は局所だけを温めるぶんかですので、真冬でも部屋は寒い。

「寒い部屋にこたつだけ」あるいは、「分厚い布団でエアコンなし」という

のも珍しくないですが、体温のスイッチとして効果的なのは快適な室温です。

例えば、室温が高すぎると、必要以上に汗を書きます。

入眠後は自然と体温が下がります。そのうえ、過剰な熱放散があると、

体温が下がりすぎて風邪をひいてしまいます。

これが夏風邪の原因のひとつなのです。

また、温度が高いと湿度も高い場合が多いです。

湿度が高すぎますと、発汗しなくなり、手足からの熱放散を妨げられ

眠りが阻害されます。「うつ熱」が起きるのです。

夏にねむれなかったり、高齢者などが入眠中に熱中症になるのはこのためです。

水分補給と吸湿性の良い寝間着や寝具が対策としてよくすすねられています。

うつ熱に関しては「室温」「湿度」による影響のほうが強いです。

逆に、室温が低すぎると血行が悪くなり、熱放散も起こらず

眠れないでしょう。

睡眠に悩んでいるなら、意識を切り替えて室温も整えていきましょう。

今はエネルギーを抑え、環境に配慮したエアコンもたくさんでています。

適温は個人差が激しいので、厳密に「〇℃が良い」とは言えませんが

冷房を付けたまま眠り、体温が下がりすぎて風邪をひくのも、「お休みモード」

といったタイマー設定で解決するでしょう。

体温は外気温にすぐには反応しないので、睡眠ステージごとに

室温を調節する必要はないと思われます。

しかし、眠りのステージに応じて室温がコントロールできれば

快眠を促す可能性も高く、実際そういった機器も開発

されているので、お楽しみに。

「そば殻枕」で頭を冷やせ!

脳の温度は深部体温の動きと「とても似ていて、入眠時にはやはり低くなる

ただし、深部体温の変化はノンレム睡眠・レム睡眠中でわずかです。

睡眠中、体温は全般的に下がったままなのに対して、脳の温度はレム睡眠

のときに少し高くなります。「夢見る」レム睡眠時に脳は起きていて

脳血流量も増加するからです。

とはいえ、睡眠中には脳を休めなければならないので、休めるためには温度を

下げたほうが良いのです。

アメリカで不眠症治療に取り組んでいる研究者の中には、頭のクーリングデバイ

ス(冷却装置)を考案している人もいますが、なかなか手ごろなものが、手に入

らないのが現状です。

通気性がいいと温度は下がるので、その意味では日本の「そば殻枕」も有効だ

思われます。

アレルギーの問題もありますが、今は技術の発達で、そば殻と構造が同じ

プラスチックのビーズも開発されています。

ちなみに枕の高さについては、気道を確保することを考えますと、

低いほうがいいということになります。

ただし、体型は皆違うし、首のカーブも違います。

さらに眠りには好みが大きく関係しますので、個人差が大きくなります。

残念ながらまくらについての絶対正解はないというのが西野先生の見解です。

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